日本の文化・伝統

外国人が注目する日本の骨董(古美術)日本人から失われる感性

外国人が注目する日本の骨董

縄文土器
昔と比べ、多くの外国人が日本の骨董を買うようになりました。

 

これは、私が、通っている骨董屋さんから実際に聞いた話です。

証言1(馴染みの骨董商)

コロナ前は、日本人よりも外国人のお客さんが来ることが多かった。また、以前と比べて、外国人がThe日本というようなけばけばしいものではなく、日本人好みの渋い物を買っていくようになった。

証言2(老舗の日本刀剣商)

昔、私が、刀剣商に勤務し始めた時の外国人のお客さんは、
年に1人いれば良い方でしたが、今では、3~4割が外国人の方。

コロナ禍においても、ネットでの問い合わせは多く、先日も500万円する刀剣を外国人のお客さん向けに海外発送しました。ほとんどの外国の方が、数百年前の日本刀がこんな安い値段で買えるのかとびっくりして買っていきます。

証言3(老舗の古美術商)

昔のように、日本人が買うことはない。お金を持っていないから。お客さんが来るとしたら、中国人。今は、中国人頼みだよ。

 

今でこそ、骨董品(古美術品)に興味を持たなくなってしまった日本人ですが、
歴史を振り返ると、日本人ほど、骨董品を大事にしてきた国はありません。

先祖伝来の家宝として数百年も守り続けてきたり、
もったいないと言い、捨てずに大事にしてきました。

だからこそ、日本には多くの文化財、骨董品がいまだにあります。

ただし、多くの人は、新品や最新の商品を好み、骨董品には興味を持ちません。

外国人からしたら、かつて浮世絵が二束三文で海外に売られた時のように、
日本は、良質で安い値段で放置された宝の眠る国なのです。

 

少し面白い話を紹介します。

とある古美術商は、こんなことを提唱していました。

 

骨董本位制

金本位制とは、国の貨幣価値を金に裏付けられた形で金額を表す制度であり、多くの金を持つ国がその通貨の保証となる。要は、豊かな国ということです。それと同様に、骨董本位制は、金ではなく、骨董に置き換えたもので、骨董品が多い国ほど、(経済的にも、文化的にも)豊かな国。

 

面白い考え方だと思います。

実際に、美術品などは、お金がある国に流れていきます。

経済大国であるアメリカや最近は、中国人が美術品や骨董品を大量に買っています。
一方の日本は、どんどん骨董品が海外に流出している状態です。

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中国には、文化大革命のためほとんど古美術品が残っていません。一方、日本に渡った中国の骨董品は、長年大事に守り続けられてきていたため、素晴らしい物が多く、日本の中国古美術の価格は、中国人の買い戻しのおかげで高騰しました。また、お茶を飲む風習を持つ中国人の富裕層の間で、日本の銀瓶が人気になり、以前と比べ10倍以上の値段になりました。

 

欧米人のアートを飾る習慣、MFAが評価されるアメリカ

フランス(絵画)インテリア

欧米では、どんな家庭でも自宅に絵をよく飾っています。

なぜなら、欧米は、自宅によく友人や知り合いを招き、食事を
する習慣があるので、家のインテリアには非常にこだわります。

ですので、もともと、アートには慣れ親しんでいるのです。

 

フランスの面白いビジネス

インテリアには気を使うフランス人。そんなフランス人向けの毎月定額で、カタログの中から何点か絵画を選び、家に届けてくれるというレンタルサービスがありました。季節に合わせて、絵を掛け替えることが出来るというもの。
日本でも、"Casie"という同様のサービスがあります。

 

The Art Basel and UBS Global Art Market Report 2021」によると、
2020年度の世界の美術品、骨董品の市場規模は推定501億ドル(5兆8000億円)

 国名市場規模市場シェア1人あたり年間アート消費額
1位アメリカ約2兆4360億42%約8,000円
2位イギリス約1兆1600億円20%約17,300円
3位中国約1兆1600億円20%約830円
4位フランス約3480億円6%約5,200円
 日本約2360億円4%約1,900円

1人辺りの年間アート消費額は、単純に人口から割った数値になります。すべての国民が買うわけでもないので、あくまで参考程度にしてください。

 

Art Market Reportによれば、過去3年のアート購入率(2019年)は、
日本人の場合だと、わずか5.4%でしかありません。

ですので、そこから計算すると、日本人の20人に1人程度が、
平均40,000円/年をアートに費やしていると考えることができます。

いずれにしても、欧米人と比べると、日本人のほとんどの人が
アート(や骨董品)を買っていないということが分かります。

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アメリカでは、「MBA」(経営学修士)を持つことがビジネス界で重要でした。しかし、今は、「MFA=Master of Fine Arts=MFA」(美術学修士)を持っている人材の方がMBA保持者よりも給料や待遇が良い時代になりました。理論に基づき、数字で経営を考えるのではなく、直感的に物事を考える「感性」や物事を解決するための「創造性」を持つことが、来たるべきAIの時代において重要だと考えられているからです。

 

失われつつある日本の文化と感性

世界のビジネス界においては、感性を求められる動きになっている中、
逆に、日本は、以前、持っていた感性を失ってきています。

それが、骨董や日本の伝統に興味をなくなってしまっている理由の一つです。

 

日本でも、昔は、どの家にも床の間があり、掛け軸や活けた花などを飾っていました。

しかし、床の間のある家は、どんどんなくなり、
家にある骨董品は、ガラクタとして処分されています。

茶道、和歌、生け花、書道など日本の日常生活の中に当たり前のように存在し、
世界のどこの国の人よりも感性が高い日本人ではありましたが、徐々に
失われつつあるのです。

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風鈴は、平安時代から魔除けの効果があるものとして1年中使われてきたものですが、今は、夏の風物詩で秋になると片付けます。これは、江戸時代、多くの人が鈴虫を虫かごに入れて鳴き声を楽むために、風鈴を片付けていた名残りです。ちなみに、外国人には、虫の鳴き声は、うるさい音にしか聞こえないそうです。日本人の優れた感性がよく分かる話です。

 

こんな風に、日本人は、世界のどこの国の人よりも、感性が豊かでした。

昨今は、除夜の音や風鈴がうるさいと苦情が出る時代です。

数字を追い求めていくのではなく、感性を取り戻すのが、
日本人がビジネスで成功することに繋がるのかもしれません。

お茶の先生談

感受性は眠っているだけで、失われているわけではありません。
私の仕事は、感受性を引き出すことです。

 

日本の骨董品の魅力

感性を取り戻す方法の一つに、アート(芸術)を愛するということがあります。

骨董品の魅力は、職人や絵師が作ったこの世で1点しかないということです。

大量生産品のように、同じものはありません。

 

また、素材にもこだわり、今では手に入らない高級な素材を使っています。

例えば、昔の碁石は、三重県産の那智黒(黒石)、
宮崎県産の碁石蛤(白石)を使っていました。

いずれも、枯渇し、現在は、海外からの輸入です。

また、生糸も、昔の蚕と今の蚕では食べているものが違うらしく、
昔の生糸のほうが上質なのだそうです。

漆も、日本産の漆がほとんどなくなり、99%は中国産になっています。

ですので、もはや手に入らない材料で作られ、昔の腕の良い
日本の職人が作った骨董品は非常に良いものではありますが、
評価されずに、安値で放置されているものがかなりあります。

外国人に目をつけられて当然ということです。

私の感想

今は、まだ日本に溢れている骨董品ですが、いつの日か、外国人が買い漁り、値段が高騰する日が来るのでは?と思ったりしています。友人には、理解されていませんが、底値の内に好きなものをコレクションしています。実は、このコラムを買いている途中も、ヤフオクで、紬の着物を落札しました。もともと数十万した着物(絹)が4,000円って、安くないですか?バーゲンセールのような気がします。

 

オススメの骨董本。

私のオススメの骨董に関する本です。3番めの骨董ハンターの本は、日本の骨董の話ではありませんが、海外が好きな人なら必ずワクワクするはずです。



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