対岸の火事では済まされない。グローバル化の弊害
2020年1月から始まったコロナ感染問題。
2年の長きに渡る混乱の後、ようやく正常化に戻ろうかという時に
始まったロシアのウクライナ侵攻(ウクライナ問題)。
一見、遠い国の出来事で日本の企業には影響がないように見えますが、
様々な企業や業界への経営リスクがはらんでいます。
(コロナよりも影響が大きいかもしれません。)
グローバル化が進んでいる現代において、
海外の動き次第で経営に大きなダメージを与えます。
ウクライナ問題における経営リスク
- ロシアに進出している企業の撤退
- ロシアやウクライナへの輸出、輸入の制限
- 原油などのエネルギー価格の高騰
- 世界の流通網、交通網の混乱
それぞれのリスクを読み解いていく前に、まずは、
ロシアとウクライナという国のことを見てみましょう。
世界におけるロシア、ウクライナの状況
ロシア | ウクライナ | |
人口 | 1億4500万人(世界第9位) | 4337万人(世界第33位) |
国土 | 17,093,311km2(世界第1位) | 603,70km2(世界第45位) |
GDP | 1兆4785億7100万ドル(世界第11位) | 1553億ドル(世界第57位) |
1人あたりGDP | 1万115.35ドル | 3741.06ドル |
(2020年度データ Wikipediaより参照)
経済規模でいうと、アメリカ、中国と比べ、遥かに小さく、
また、ロシアやウクライナと直接取り引きしている企業も少ないため、
経営者にとってはあまりリスクに感じられないかもしれません。
ただ、ロシアとウクライナには、多くの天然資源(原油、天然ガス、
石炭、木材、魚介類、穀物)などがあり、これらの流通が途絶えることで
多くの企業にとっての経営リスクになっているのです。
こちらは、ロシアとウクライナの天然資源(2020年度)の状況です。
天然資源 | ロシア | ウクライナ |
原油(輸出額) | 世界第2位 | 世界第75位 |
天然ガス(輸出額) | 世界第1位 | |
金(産出量) | 世界第3位 | |
小麦(輸出量) | 世界第1位(シェア18.8%) | 世界第5位(シェア9.1%) |
蕎麦(生産量) | 世界第1位 | 世界第5位 |
経済規模は小さくとも、生活や産業に必要不可欠な一次資源を圧倒的に有しており、
これらが世界中に大きな影響をもたらしているのです。
いよいよロシアがウクライナに侵攻したことでどんな影響が、
企業やビジネスにもたらされたかグローバルリスクを見ていきます。
リスク①:ロシアに進出している企業の撤退
日本で起業している人にはあまり関係がないかもしれませんが、
今回のウクライナの問題により、ロシアから撤退した企業が出てきています。
主な撤退企業
- アメリカ・マクドナルド社 (約1800億円損失額)
- 英国・エネルギー大手BP(約3.3兆円損失計上)
- フランスの自動車大手ルノー(約3100億円減損損失)
- 日本企業 約4割がロシアでの事業停止
というような状況で、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、
世界の企業のロシア事業に関する損失は合計約7兆9000億円になるそうです。
リスク②:ロシアやウクライナへの輸出、輸入の制限
このリスクは、ロシアと直接取り引きしていない
日本企業にも大きな影響を与えている問題です。
前述したようにロシアとウクライナは、
世界でも有数の天然資源国家です。(特にロシア)
ロシアやウクライナは、2020年度、小麦の輸出世界約30%のシェアを誇り、
この両国からの小麦の輸出停滞によりパン屋、ラーメン屋などの経営にも
大きなダメージがあります。
さらには、一見、ロシアとは関係がなさそうな
日本の蕎麦屋にも影響をもたらしています。
(実は、ロシアは、蕎麦の世界的な生産国なのです。)
リスク③:原油などのエネルギー価格の高騰
ロシアのウクライナ侵攻後、原油などのエネルギー価格が高騰。
じわじわと、電気代やガソリン代が上がってきており、観光業、漁業、農業、交通業、
果ては近所の銭湯やクリーニング屋までほぼすべての企業にとっての経営リスクに
なっています。
また、日本は多くの原材料を海外から輸入しており、
輸送費の増加は、あらゆる商品にもコストが転嫁されていきます。
リスク④:世界の流通網、交通網の混乱
空の影響も大きな問題です。
世界で最も広大な領土を持っているロシア。
これまで、日本からヨーロッパの飛行機は、このロシア上空を通っていました。
しかし、ウクライナ問題後、ロシア上空を飛行することができなくなり、
多くの便は、経由を余儀なくされました。
一時期は、郵便局のEMSや小包もこの混乱のため
ヨーロッパ方面への発送ができなくなりました。
とある経営者(輸出業)の話
ヨーロッパに日本の商品を販売していた知り合いの経営者A。入国制限もあり日本好きな外国人が日本に旅行することができないので、日本の商品を積極的に買っていました。コロナ禍においてどちらかというとうまく行っていたビジネスでした。しかし、今回のウクライナ問題の影響で、状況が一転。これまで使っていた郵便局の国際輸送が利用できなくなり、割高のDHLに変更したため、お客の7割近くを失ってしまったそうです。
さらに詳しく
一方で、今回のウクライナ問題で、空の交通網の混乱に伴い、大きなチャンスにつながったのがDHLなどの専門の輸送業者です。自社の飛行機を使って海外への輸送を行っていたため、迅速な対応ができ、売上を大きく伸ばしました。(郵便局は、他の航空会社との提携で海外発送を行っており、独自の輸送ではありません。)
グローバルリスクに対する対処法
「風が吹けば桶屋が儲かる。」「一寸先は闇」
というように、グローバル化が進んでいる今、世界の動きにより、
自分のビジネスが大きな影響を受けてしまうようになっています。
もし依存度が高い中国で何かあった場合、とんでもない影響を受けることでしょう。
グローバルリスクに対する対処法
- いつどうなるか分からない状況なので、
できるだけ余裕資金を確保しておく。 - 状況が良い時こそ注意が必要。
その状況を維持できるように保険をかける。
(為替や原油の条件が良い時に、先物市場でヘッジをかけておく) - 顧客や販売市場も、日本人だけではなく、外国人への販路拡大。
または、その逆。(1つの国への偏りは危険) - 代替手段の用意をしておく。
(例えば、小麦粉ではなく米粉。)
世界のどこかで変化が起こるだけで、一気に経営に大きな悪影響をもたらす一方、
大きな変化は、ビジネスチャンスにつながる時もあります。
これからの世界
先の読めない時代だからこそ、より柔軟な経営が求められます。