秋山光輔さんへのインタビュー
1978年2月生まれ。京都府の片田舎に生まれる。 会社サイト:台湾のインバウンド専門のウェブマーケティング会社「カケハシ」 Instagram:カケハシ代表の秋山光輔 |
Q1: 現在、どんなビジネスをされていますか?
台湾の首都、台北のランドマークでもある101のとなりでウェブマーケティングの会社をしており、今年で11年目になります。
主に台湾人に対して日本への旅行や商品、サービスに関するインバウンド関連のPRをウェブを活用して発信しております。
台湾や中華圏で有名なインフルエンサーやタレントさんに協力いただき番組を制作したり、Youtubeを企画したり、SNSやウェブ広告、台湾現地メディアを活用して情報を発信したりしています。
また「台北経済新聞」という台北現地のニュースを日本語で発信するウェブメディアの運営や、台湾のクラウドファンディングを活用した台湾進出サービス「TONARIE - トナリエ」なども当社の運営です。
Q2: 起業したきっかけは何だったのでしょうか?
2010年頃、日本で私がウェブ広告会社を経営していた際に、クライアントである上場企業様の台湾進出プロジェクトでWEBリーダーとして台湾視察に私を呼んでいただいたのがきっかけです。
それまでは「海外=旅行」としか考えていなかった私でしたが、ビジネス視点で海外を見た時に、「こんな世界があったのか」と視界がすごく広がったのを今でも覚えていています。台湾の市場を知れば知るほど、わくわくが止まりませんでした。
その視察から約半年で台湾に移住し、その後法人を設立することになりました。
Q3: なぜ、台湾で起業しようと思ったのですか?
当時2010年の台湾では既にfacebookアカウントの人口シェア率が50%を超えていてfacebook先進国の一つでした。
かたや当時の日本人のfacebookの人口シェア率は1%にも満たない数で、ちょうどmixiというSNSが全盛期の頃でした。
歴史的にも距離的にも近い台湾と日本で、「利用しているSNS」にこれだけはっきりと違いが出ることも面白かったですが、なによりこれからはグローバルに展開されているSNSの時代が必ず来ると私自身が感じていたので、「facebook先進国である台湾で日本の情報を届けたい」そう思ったのが起業のきっかけです。
Q4: 最初の起業資金はいくら必要だったでしょう?
台湾に移住した際に300万円持って行ったのを覚えてます。
法人設立のために用意した資本金は50万元なので、当時のレートで180万円くらいでしょうか。あとは家の手配、生活、通訳などを含めた法人の手続き費用、などで1年ももたなかったと思います。
Q5: 台湾の起業環境について教えてください。
一部の国であるように、現地の国籍の人を株主につけたり、50%以上株を保有できなかったり、そういった制約は無い国ですので、比較的起業しやすい環境だと言えると思います。
必要なお金さえあれば、自分一人で法人設立は可能です。
また歴史的背景もあり日本語が話せる人が多かったり、新日の方も多いので起業にあたって「大金を騙し取られた!」などのような大きなトラブルは少ない国と言えると思います。(小さなトラブルはたくさんありますが。苦笑)
Q6: 台湾でビジネスを行う際に困ったこと(失敗談)は何でしょうか?また、起業する際の注意点は?
台湾に行く前の自分自身の台湾のイメージと、行ってから生活し初めて感じる想像とのギャップは誰しもが必ずあります。
私は台湾に全くつながりのない状態で移住し、法人設立したので、本当に何もかもがゼロからのスタートでした。正直この方法はお勧めしません。
今はネットで必要な情報は集まりますし、台湾に来る前になるべく台湾を知ることをお勧めします。情報だけでなく人の繋がりも含めてです。
可能なら短期語学留学なども並行して少し住んでみるのもいいかもしれません。
Q7: 起業してよかったと思うことは何ですか?
台湾という国のWEBマーケティングという業界においては一定の競争力を持てたことでしょうか。
日本で経営者していた頃は、当たり前ですが人口も多く競合も数えきれないほどありました。
もちろん日本人ですから、日本国内で起業するのがもっとも居心地は良いと思いますが、海外で日本人が起業をして、新たな領域で新しいサービスを作ることは、全てが経験で、その経験が競争力になります。
11年経ったいま、現在は日本の報道番組やニュースなどで、台湾現地のコメンテーターとして番組出演させてもらうような事も増えました。
逆に台湾現地のTV番組に出演させてもらい日本の事を紹介する機会もあったりします。
Q8: もし、今のビジネス以外に新らしく台湾でビジネスをするとしたら、どんなことをしたいですか?
これまでは日本の旅行や商品を台湾の方達に露出してましたが、その逆をしたいですね。
台湾での旅行や魅力を日本人に伝えたいです。
気づけば台湾でもう11年、台湾人と結婚をして子供も生まれて台湾の事がもっと好きになりました。こんな台湾の魅力をより多くの日本人に知ってもらいいなぁと思います。
Q9: 経営のかたわら育児などもされてると伺いましたが、両立は可能でしょうか?
そうなんです、実は妻が2年前にステージ4の肺癌が発見し余命宣告され先立ちました。
当時娘は4歳で、本当に壮絶な闘病生活でしたし、ちょうどコロナの時期と被っていることもあり今日までのこの2年は本当に色々ありました。
そんな中、一つ良いことがあったのが、会社の団結です。
妻が余命宣告を受けて病気と向き合う生活が始まった時、会社の仲間達が「社長がいなくても私たちで頑張るんだ!」と妻の闘病生活を共に応援してくれました。
義理の父母も助けてくれたり、娘も様々なきっかけがあり今は二人で前向きに生きています。子供が元気なのでなんとか明るくやってます。
Q10: 台湾は、親日家が多いと聞きますが、日本のどんなものに興味を持っているのでしょうか?またどんなところで親近感を感じたりしますでしょうか?
日本のコンテンツ(漫画、アニメ、ゲーム)の影響力が強いです。
弊社のオフィスビルは台湾で最大級の展示会場でもあるので、ゲームショーやアニメショーなども毎年やっていますが、その中でも日本のタイトルが最も目立ってますし、みなさん限定品欲しさに前日から並ばれたりします。まるで昔のドラクエの発売日を思い出すような光景です。笑
人によっては2日前から並んでいる人たちもいますね。
日本のアニメを見て日本語を覚えた、なんていうセリフも数えきれないほど聞きました。
そんなアニメや漫画、ゲームが日本に興味を持つ入口にあって、その結果、日本への旅行や食、言語、ファッション、文化などに興味が派生する人たちが多いように見えます。
Q11: 最後に、これから起業しようと思う人たちへのメッセージをお願いします。
台湾に限らずですが、海外での起業は簡単なものではありません。
簡単なものでないからこそ、行動できる人は少ない。
行動できる人が少ないからこそ、その行動に大きな意味や結果が生まれるのだと思います。
ただ、昔と比べると海外での起業のハードルがある程度下がりました。ハードルが下がった分、気軽に起業ができるようになりましたので、競合もそれなりにいます。
なので「新日だから」という気軽な感覚で台湾に来ると失敗しますし、実際に撤退されてる企業も多くあります。まずは自分のやりたい事がこの台湾というマーケットにあるのか。しっかり見極める必要があります。
私は台湾で起業を考えている次の世代の若者を応援しています。